北の果て一人生きる

NHK総合で1月3日に放送された漁師のドキュメンタリー「北の果て一人生きる 浜下福蔵92歳」。日本最北の離島・礼文島のさらに最北の鮑古丹(あわびこたん)という地区で生まれ育ち、体力の問題で引退した老漁師を描いている。朝から海や自然を見つめ、毛筆で自作の詩をしたためる。素直で力強くありのまま感じたことを筆で表現するのだが、その詩が素晴らしい。

©NHK

特にラグビーでの挫折を抱えた大地さんという若者と仲良くなるシーンが心に残った。彼は昆布漁の短期アルバイトで鮑古丹にやってきていた。若者たちから孤独を癒やしてもらい、力をもらっていることを福蔵さんは感じていた。

「底知れぬ力をもって(礼文島の)花が”大地”に顔を出す」「なんだこの男は大地?俺の書いているのと同じではないか」「それもそのはずご両親が喜びあふれて、この子を誰よりも良い者に育て、良い者になって欲しいと」思いを込め君に名付けたのだと。そんなことを詩で伝えていた。それまでニコニコしていた大地さんも顔が引き締まった。

なかなか良い詩になったと思ったのか、「今の録音してた?」と聞くところもお茶目だ。「いや、撮ってないけど、今のはテレビカメラで撮れてる」と大地さん。

たったひとりで最北の港をずっと守り続けているので、福蔵さん自身はもはや達観して孤独を感じなくなったのかと思いきや、最愛の妻を失った孤独は今も全く癒やされておらず、寂しくて泣く日もあるという。しかしこうした若者たちとの出会いを経て、最後は「強くなければ生きていけない」と夕闇の海に向かってつぶやく。

こんな厳しい環境での生活は自分には到底できないが、我慢も多かった若い頃と違って、年齢を重ねて徐々に自由に生きられるようになってきた。仕事は全然違うものの、福蔵さんを見習って、他者や自然から生きる力を得ながら、シンプルに生を楽しめればいいのだということを教えてもらった。

1/10まではNHK+で見られるのでどうぞ。

2023.1/7

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