海をきれいにするな?

岡山県倉敷市、瀬戸内海の海でノリの不作が続き、コンビニでもノリを使わないおにぎりが4割に増えてきているという。確かに最近、ノリって意外と高いなと思っていた。
瀬戸内海は高度成長期に赤潮によって瀕死の海といわれたが、行政や企業が排水の水質改善に取り組み、瀬戸内海では窒素の量は1/3まで減少したという。その結果、窒素やリンといった海中の栄養塩が減ったことがノリの色落ちを招いた。他にも魚や貝もプランクトンなどの餌が育たないため減少した。海がきれいになったのは喜ばしいが、漁業者にとっては複雑で、古くから漁をしてきた男性は「海が泣きよる」と話していた。

NHK地域局発@okayama▽きれいな海から豊かな海へ転換期迎えた瀬戸内海 
20210年5月18日午前10:15-10:40 ©NHK

北大を卒業しNHK岡山局でディレクターをしているSHさんが制作チームの一員だったということで連絡をいただいたのだが、私が筑波大学の自然保護寄附講座でやっている科学コミュニケーションの授業にも関連していたので興味深く拝見した。まだぎりぎりNHK+で見られるのでぜひ上の画像のリンクから見てほしい。
 

排水をあえてきれいにしない

いまは岡山県の児島湾につながる下水処理施設で、排出される窒素の量を基準の範囲内で増やしているそうだ。これまで家庭などからの排水はバクテリアの働きで窒素を取り除いていたが、その働きを弱め、90年代の水準まで窒素の量を増やし、ノリの色落ちを防ぐことができるか調べる。もちろん、窒素だけが色落ちの原因ではない可能性もある。また季節ごとの管理によって赤潮になる心配はない

しかし同じ行政でも環境管理課や観光に携わる人からは、きれいな海が汚れてしまうのではないかと心配する声が上がる。シーカヤックのガイドの方はツアー客が最も感動するのは透明な瀬戸内海であり、観光への影響を懸念する。私もこの方がガイドをしている牛窓に家族みんなで旅行に行ったことがあり、今でも良い思い出になっている。
 

どんな自然を理想とするかは人によって違う

これは自然環境保全を巡る価値判断の問題であり、どんな自然環境が望ましいのかが人によって違うため共通の理想像を作りにくいことを示している。かつて2005年に私が六甲山でさわやか自然百景をディレクターとして制作したとき、可愛らしいという視点だけでイノシシやうり坊を紹介するのはいかがなものかと感じ、そこからずっと気になっていたことでもあった。

科学技術社会論で「専門家だけで決められない価値判断を含む科学技術の問題」のことを「トランス・サイエンス問題」という(詳しく知りたい方は大阪大学の小林傳司先生のこの論文などを参照)。原子力や生殖医療などがその典型だが、時代が変化することで環境保全や自然保護もトランス・サイエンス問題の一つになったといえる。
どのような状態が最も最適な自然環境なのか、過去のいつ頃の自然を目指すべきなのかは専門家だけで決定できず、地域住民や関係業界団体、行政、NPOといった利害関係者で合意をまとめる必要がある。

例えば、生物多様性と水質環境のというのはどちらも高い・きれいというのが望ましいわけだが、「水清ければ魚棲まず」と言われるように、この要素は相反することがある。もちろん高度成長期のように徹底的に汚染されている場合は水質の改善がそのまま生物多様性の向上につながるわけで、私が学生の頃は自然保護にそれほど複雑なニュアンスはなかった。つまり破壊されてしまった、あるいは破壊が進行中の自然をとにかく守り復元していく方向性が明確だったわけだが、1990年代頃から自然環境が少しずつ改善され、例えば瀬戸内海では水質を上げることで水中の窒素やリンが不足し、生物にとっては住みにくい環境になってしまった。

原生林が素晴らしいことは自明であるかのように言われることがあるが、実際の原生林は湿度が高く、虫も多く、必ずしも誰もにとって快適とは言えない。中央アフリカの熱帯林にしばらく滞在してニシローランドゴリラやチンパンジーを撮影したことがあるが、ツェツェバエやハリナシバチ、アフリカミツバチなどに付きまとわれ、必ずしもいつでも気持ちよいわけではない。
もちろんこういう環境が大好きな研究者や保全活動家の方々もいるが、一般的な感覚とは言い難い。つまり、絶対的に減っている原生林を増やそうという合意はとれても、それが自らの生活空間に及ぶと、そうも言い切れなくなってくる。
  

異なる立場の人々が対話する

このように立場によって意見が異なる問題の合意を作るのは難しい。番組はこうした科学コミュニケーションの問題まで切り込んでいた。広島大学の松田治先生によれば、これから目指すべき理想状態というのは実際は社会条件、その時々の自然環境によって変化するため、いつ頃の自然に戻すべきかという発想ではなく、関係する人々で地域の実情に応じてどんな海が良いのかを考えることが大事だという。

こうした里山、里海づくりには、自然科学の専門家だけでなく、NPOやコミュニケーションや合意形成のプロも入って様々な立場の人の異なる意見や取り組みを集約し、地域ごとに合意を作っていくことが大事である。こうした問題にまず取り組むのは地域の自治体だと思うが、早い段階でこうしたNPOやプロを入れて意見を集約していくのが望ましいと思う。今回のNHK岡山局の番組はこうした地域の取り組みの事例として参考になる。

2021/5/22

NHKスペシャル「被ばくの森 2021」

以前お世話になった苅田ディレクターと中井プロデューサーが担当していたので、じっくりと2回ほど見た。
不謹慎だがと断って研究者が述べていたように、福島第一原発事故から10年たって低線量被曝が野生生物、ひいては人間に対してどのような影響があるのか、期せずして壮大な実験圃場となっているのは間違いない。私も正直なところ被曝がどのような生理学的な変化をもたらすのか興味がある。
番組では、原発事故に翻弄されながらも調査に協力する被災者らの人間的な側面もあわせて描いている。まだNHK+で見られるのでぜひ見てほしい。

NHKスペシャル「被曝(ばく)の森2021 変わりゆく大地」2021.5/9(日) ©NHK
野生動物に占拠されてしまった帰還困難区域

野生動物が街中を闊歩し無人の家を荒らす映像によって、自然が秘めたたくましい生命力を見せつける。被災者には悪夢のような光景だが、ドローンによる無人の帰還困難区域を映した映像が美しく印象的だった。空撮による移動ショットの中で、時間経過をフェードで表現するなど凝った映像も多かった。
またキツネとイノシシが接触しそうになる映像もあった。基本的に別種の中型哺乳類が、野生の環境で遭遇するのを見かけることは極めて稀であり、野生動物の密度が高まっていることを象徴するシーンである。
もちろん注目すべきは映像のすごさだけではなく、福島第一原発事故から10年経過しての放射能被爆の生物への影響評価をコンパクトにまとめてくれていることである。以下にまとめる。
 

不気味な変形を見せる針葉樹

原発事故の後2〜3年の間に芽吹いたアカマツに限って枝分かれが非常に多い異変があったことが、福島大学のヴァシル・ヨシェンコ先生らによって確認された。なぜか幹が発達しない。マツの他3種類にも事故直後に異変が見られた。帰還困難区域のアカマツはオーキシンの濃度が低くなることが原因と考えられている。
放射能による汚染は目に見えず被害が分かりにくいのが特徴だったはずだが、目に見えて形に異常をきたしていることが分かるのは非常にインパクトが大きいといえる。
 

山にいなかったはずのクマが出現

東京農業大学の山崎晃司先生らの調査で、浪江町のセンサーカメラに、阿武隈山地周辺では生息しないと考えられていたツキノワグマがこの3年で3回、捉えられた。2020年7月、飯舘村の林道でツキノワグマの親子に遭遇した地元の人の映像で、このエリアではじめて子育てが確認された。繁殖の中心になる集団が阿武隈山地に定着している可能性が高く、増えて分布域を広げるのは確実だという。ツキノワグマは10年で5倍に増える繁殖力をもっていて、今後も人里を脅かしかねない。
ちなみに阿武隈山地のセンサーカメラで高標高地に外来種のアライグマが見つかっていることも分かった。コロナ禍で少し人が外に出なくなると、すぐに動物たちが進出してくるのは世界共通の現象であり、昨年は北大でも久しぶりにエゾシカがキャンパスに入り込んだ。キタキツネも街なかに姿を見せるようになってきている。
 

初期被爆のサルに癌化などの兆候は現時点では見られず

東北大学の福本学先生のニホンザルの初期被爆に関する調査。サルの寿命はおよそ20年なので10年経過したサルの体内で起きる変化は人への影響を推測しやすい。
2021年2月有害駆除されたニホンザル648匹目の解剖の様子も紹介されていた。空気や餌から大量の放射性物質を取り込んでいた。甲状腺には放射性ヨウ素131が集積し、癌の原因となるが、半減期が8日と短いためヨウ素131はすぐ消えてしまう。そこで半減期の長いヨウ素129に目をつけた。原発事故で22(ヨウ素131)対1(ヨウ素129)の割合で発生したと推測されている。
ヨウ素129を使って、初期の被曝量を7匹で推定したところ、汚染された餌によって1000ミリシーベルトに達した高い被爆をしていたと思われる3匹がいた。しかし、甲状腺の細胞組織を精密に分析したが、今のところ癌は見つかっていない。
 

サルの染色体に異変見つかるも回復傾向

弘前大学の三浦富智先生は、サルの染色体に異変を見つけた。2つの色が混じり合ってるように見える。切断された2本の染色体が入れ替わって再結合した「転座」と呼ばれる異常で遺伝子を変異させることがあるという。染色体で遺伝子の変異が蓄積し続けると、細胞が癌化するリスクがあり、非汚染地域に比べ2.5倍の頻度であった。
だが、その発生頻度は最近になるほど減少していて、回復しつつある。これもまた野生動物のもつ生命力というものなのかもしれない。
 

被爆したイノシシも環境に適応しつつある?

宮城大学の森本素子先生はイノシシの免疫への影響を調べている。旧避難指示区域のイノシシは汚染されていない兵庫県のイノシシと比べ、免疫を強化するサイトカインという物質の関連遺伝子が10倍活発になっていた。
慢性的な低線量被爆を繰り返すイノシシの体内では、小腸の内側の無数の免疫細胞には放射線によるストレスが常にかかる。遺伝子は免疫活動を強化するためにサイトカインを作る司令を出す。
サイトカインが暴走するとかえって体にとってはリスクとなるが、イノシシの小腸では現時点では目に見えるような変化は起きていない。放射線の影響は受けているが、生理学的な範囲では対応できているという状況だという。これもまた生物の適応力なのだろうか。
 

ネズミの精原細胞が増えている

新潟大学の山城秀昭先生によると、被曝量が多いアカネズミほど精原細胞が増えていることが分かった。よく見ると精原細胞は二層になっていて、被曝量が少ないネズミより数が多い。低線量の刺激で何らかの増殖機能が働き増えたようで、種を保つための反応といった生命現象の一つだと思われる。だが最終的にできた精子の数と受精能力は被曝量に関わらず、変わらなかったそうだ。
 

被ばくの森の今後

東京農業大学の上原巌先生は、事故直後から汚染された森林の再生について研究してきた。注目しているのは新たに芽吹いた樹木。日陰に強い樹木が生えてきていて、セシウムはほとんど含まれていないことが分かった。セシウムは土壌に強く吸着され、根からの吸収が抑えられているのかもしれないとのこと。一時は絶望視されたが、被爆の森における一つの希望として紹介されていた。
 

故郷を奪われながらも調査に協力する被災者たち

住む家や土地を汚され、仕事も奪われた被災者らの絶望は、お金で解決できるものではない。せめて科学的な調査には協力しようと尽力してくれている姿には本当に頭が下がる。
人生を賭けて森を育てきた林業家や、被爆した牛を見捨てずに世話してきた酪農家。もう出荷できない放射能に汚染された牛だが安楽死させるのはかわいそうだと、研究のサンプルに提供することもあるという。
原発事故後、駆除されたイノシシは6万頭に達した。イノシシによる被害は大きいが、檻の中にいる小さな子どもを殺す時は本当に涙が止まらなかったという猟師の言葉は重い。動物たちもまた被害者だ。

研究者は「汚染地の状況は50年、100年先を見越してどういうふうに向き合っていくかが必要だ」と語っていた。放射性廃棄物は処理に何万年もかかり、こうした科学者らによる継続的な研究が生かされる日がくるのかもしれない。

2021.5/11

札幌から大阪へ 

なぜか家の近所の公園に樺太犬の慰霊碑があった

この4月から住み慣れた札幌を離れ、大阪の堺市にある大学で働く。新卒で就職した新聞社も最初は大阪だったので感慨深い。やはり人口密度が高くてにぎやかだ。コロナも活発だ(笑)。

札幌と全然違うけど、正反対の文化圏で暮らすのは楽しいし、元は関西人なので、近所にたこ焼き屋があって、見知らぬおじさんやおばさんと軽口を叩けるようなこの空気がやはり好きだ。

私立大学の教授ということで全く別世界に来たような印象である。そもそも前の職場が特殊過ぎたので、事務の方々がしっかりしているこのような職場の方が一般的だろうと思う。誤解のないよう言っておくと、北大全体ではもちろん事務はちゃんとしている。教員が応募や選抜、教務、修了式といった事務的なことをこなさないといけない特殊な部署だったということである。しかしそのおかげでWebやLMSサイト制作・運営といったスキルも身についた。

用事があって、前に住んでいた川崎のあたりを通って東京に行った。なつかしかったが、このあたりには長く仕事や生活をして、いろいろな思い出が染み付いている。また東京方面に戻ろうとは思えなかった。姫路出身だが、家の出自は大阪だし、父も同い年で堺に単身赴任したこともあって、心機一転でここ大阪の堺から再スタートは自分にとっては良かった。

というわけで、コロナが落ち着いたら、関西の友達に会いに行きたい。あと筑波大学の指導教官も昨年度で退官されたので、ワクチンなど万全を期してお会いしたいと考えている。

2021/4/4

デザインの重要性

今回の研究紹介映像はデザイナーの方に入っていただいて作った。予算的にも時間的にも余裕がないとできないので、良い機会となった。ただ全体構成にも影響するので、早めにデザイナーの方に入ってもらったほうがよいかもしれない。
単にテロップやCGをスタイリッシュにする、親しみやすくするといった機能にとどまらず、映像全体の構成、何なら取材の方法にも影響するからだ。

https://www.hokudai.ac.jp/news/2021/01/post-781.html
実際、今回は続編の余市果樹園の方は編集を変えて1分程度、新たなシーンを付け加えることになった。「●●先生が目指す未来とは?」というエンディング前の要素である。フォーマットとして統一感をもたせる意味もあるが、映像構成としても締まった。

2020年2月に伝統的なドキュメンタリー番組であるETV特集で、「おいでや!おやこ食堂へ」という番組があった。ETV特集で子ども食堂といえば、いかにも外国人労働者やシングルファザーの苦境を描いた、みたいな番組構成が容易に想像されるが、以下サムネイルを見るとそういうベタなドキュメンタリーとはちょっと違うことが分かるだろう。

©NHK

https://www.nhk.jp/p/etv21c/ts/M2ZWLQ6RQP/episode/te/3RJ25QZ622/
どっちが先か分からないが、映像デザインによって撮影方法や編集もちょっと変わっただろうと思う。例えば、通常の大きいテレビ取材用の業務用カメラでなく、一眼レフの質感の方が合いそうだ。

私たちの場合は、仕上げ直前にデザイナーに入ってもらったため余裕がなかったが、実際はつけるBGMや取材方法も変わったかもしれない。例えば車でいえば、デザインによって、内装のみならずエンジンやトルクなどのフィーリングといった走りそのもののコンセプトまで変わるということでもある。

カメラマンにもいろいろなプロがいるので、あえてスチルのカメラマンを使ってみるとか、編集マンもCMの方を起用してみるとか、関わるスタッフによってできるドキュメンタリーに多様性が出てくるかもしれない。

ここからは余談となるが、じゃあ編集にMacまたはWindowsを使った場合で違った映像になるのだろうか。使っているのは同じAdobe Premiere Proである。うまく言語化できないが、使用ツールもコンテンツの内容に影響するのではないだろうか。今回は事情があってカット編まではWindowsで作ったが、仕上げはいつもどおりMacにした。

しかし、そのような使用ツールによらない普遍的な名作というのもあるだろう。鉛筆や万年筆で描かれた名作の元原稿はそれ自体に作品性があってアートのようにも感じる。そういう内容そのものが力強い作品にも惹かれるものだ。

2021/1/27

2020 社会の構造が変わった年

今年は組織から離れ、個人で仕事をした年だった。外側から見ると、新型コロナウイルス感染症対応では、これまで日本の組織が抱えていた以下のような問題点が浮き彫りになったように思えた。

  1. 古いやり方がなかなか変えられない
  2. 評価や価値判断ができない
  3. 組織の力を結集できない

だが変わる能力のある組織は変化し始めた。例えば、印鑑廃止というのはそれに伴う業務プロセスすべてに影響するので、これまでのように何となく仕事を末端に押し付けていてはことは動かない。トップの決断が必要となるし、責任を負う覚悟も必要だが、印鑑廃止を始めた組織も多い。ものごとの価値を判断・評価できないという日本の宿痾において、印鑑と年功序列は何かつながっている要素のようにも思える。行き着いた究極形が、IT担当相がはんこ議連の会長という、、台湾の天才IT大臣と比べると壮大なブラックジョークの現実化である。
DXという言葉が流行っているが、デジタル化が本質ではない。アナログの方が効率の良い場面はあるわけで、教育も何でもオンラインやデジタルでやればよいというものでもない。トップがリスクをとって、一つ一つの結果を適切に評価しその都度、判断できるかどうかが重要だ。

DXでフリーランスの時代が来るようにも言われているが、逆にこれからはデジタルツールや普遍的な能力を獲得している人材を内部で育てていかないと、組織の成長もおぼつかない。
既得権益が有効で、組織が揺るがない時代は、外注の管理業務だけ任せられる無難な人材でもよかった。しかし、デジタル化は本質的な変化である。

2020年は本当に節目の年だった。私は来年度は組織にふたたび属する予定で、今度は自分が試されることになる。今までは権限がないので気が楽でもあったし、責任をとる必要もないので甘えたところもあった。
メディアの世界も激変した。個人の能力で生きていけるタレントたちがどんどん組織を飛び出し、新たな動きを生み出している。新聞にもテレビにも書籍の世界にもデジタル化による不可逆的な変化が進んでいる。

個人的には今年の仕事では登山VRが印象に残っている。新境地を開いたというほどではないが、これまで自分が好きでやってきたことがつながったような気がする。まだ進行中なので詳しくは言えないが、北大での仕事もだいたいやり終えた感じはする。それぞれに大きな組織に所属する優秀な若者とともに仕事をしてその成長を実感するという、指導者として幸運に恵まれたことが最大の収穫だった。無難に受発注業務だけこなすような人材ではなく、今後もプロフェッショナルとして創造的な仕事をしていくと期待する。
私はオールドメディア出身ではあるが、もう新聞とかテレビといった旧来の媒体の枠組みで語る時代でもなくなった。来年からは、新しい変化を起こすことに焦点を当てて仕事をしていきたい。

2020/12/30

VR動画・バーチャル登山「アポイ岳」の制作

札幌駅地下歩行空間でVR体験

久しぶりにVR映像をクリプトン・フューチャー・メディアが実施しているNoMaps2020のイベントのために作った。今回は北海道庁とのコラボである。自分が好きな登山+地形や高山植物の解説VR動画でやりがいのある仕事だった。
来年度以降も計画はあるのだが、私と担当の道職員の仕事次第という感じではある。結構、好評で札幌駅地下歩行空間では足を止めてくれる人も多かったので、また来年以降もやってみたい。北海道新聞の記事はこちら

イベント概要

使用機材

撮影には、GoPro MaxとOsmo Pocket、SONY FDR-AX60等を使用した。ロケは北大の学生だけでなく道の若手職員と協働して行った。全員に重要な役割があって、一発撮りで失敗は許されない状況だったが、天気含め奇跡的に何とか持ちこたえた。
気心の知れた学生たちとのロケは楽しい。今回は正規の授業でもなかったので、余計に肩の力を抜いて取り組めた。
 

VR動画撮影のコツ

今回は2017年の支笏湖の時のように、2D版とVR版と2つ作っているが、2D版はレポーターもいてルートガイドということで情報も多いので、編集は大変だった。ルートガイドを全天球カメラでロケする時のコツとしては以下のようなものがあるだろう。

  • まずは2D版というか、通常の映像を作ってからのほうがVRの構成は考えやすい。しかし、2Dと全天球の2種類のロケを同時に行う必要があり、難易度の高いロケとなる。
  • レポートする出演者を収録する際は、全天球カメラ撮影者のヘルメットからGoProMaxを外して、三脚を立てて出演者のすぐ近くに置く。4K平面カメラの前をふさぐ形になってしまうけど、それはしょうがない。極力、出演者にかぶらないように。
  • できるだけ周りの環境音をきれいに撮影しておく。音声収録専用のスタッフも必要。自然や環境コンテンツを作る時は、音声も非常に重要なコンテンツの一部である。
  • 可能であれば、TCはFree Runで、UBで時刻にしておく。まあ、これはマルチカメラのロケであれば何でもそうなんだけど、特に野外の撮影はそうである。Premiere側で撮影時間でソートできればいいんだけど、何かいつもうまくいかない。
  • 全天球カメラもヘルメットだけでなく、時々、一脚などで浮遊感のある映像を撮っておくとよい。これに関しても別のカメラマンを用意して、ヘルメットのスタッフと交代でやらせるべきかも。休憩にもなるし。
VR版をAdobe Premiere Proで編集している様子
大学が行政と協働してどう社会課題に向き合うか

注意すべき点はいろいろあるが、こうした実践知は、以前、支笏湖で水中の全天球映像を撮った時も同様、実際にやってみないと分からないことばかりだ。
ディレクター&プロデューサーが2名ほど、通常撮影1名、音声1名、GoProMAX2名、Osmo Pocket1名、荷物持ちが2名程度+出演者ということで理想体制では10名以上で動くロケということになる(今回は私がDと通常カメラと音声を兼任)。宿泊を伴う野外ロケの場合はかなり大変だ。この人数の食事と宿泊道具も必要となる。

様々な形で行政の方々が謝意を尽くしてくれたし、学生たちは活動には満足してもらえたとは思うが、今後は教育的な枠組みとして再設計したいと思う。
今回、「ジオパーク振興」という科学コミュニケーション上の課題を北海道庁から提示され、こうした問題に取り組むモチベーションをもらった。これはお金だけでは換算できない重要な学術資源でもあるといえる。

VR動画の編集について

編集時にも注意点はいろいろあるのだが、ここで詳しく書いてもよく分からないと思うので細かい話は割愛する。
今回も編集はAdobe Premiere Pro CCを使用した。まずはGoProスタジオというソフトでPremiereで編集できるコーデックに変換しないと編集できない。また編集マシンのスペックにもよるが、通常はProxyを作らないと5K以上の解像度となるGoProMaxの編集はできないだろう。

GoPro MAXは様々な表現を可能とするデバイスである。事前に試しで撮影して編集のイメージを作ってから今回は作った。
Osmo Pocketも今回のアポイ岳だけでなく、以前の恐竜や農場の取材でも大活躍した。最近の撮影では欠かせないデバイスになってきている。この10月にPocket2も出たので、また試してみたい。

以下が今回制作した2D映像とVR映像である。関係者の皆さん、おつかれさまでした。

2020/10/28

オンライン授業での学び

動画制作をメインに進めている演習形式の授業が3つ終わり、ようやくひと段落した。だが、まだ作品完成までは時間がかかる。
 

自宅のほうが集中できる?

今年は学生たちが自発的に作業を進めるケースが多いように思う。その理由としては、自宅作業を遠隔でやっているので、そのままシームレスに自宅で作業を続ける意識が継続しているからだと思う。自宅のほうが集中力も高まるし、通学というのは意外と心理的な負担もある。いちいち大学まで来て、鍵を借りたり教員に連絡調整する気遣いが不要なのだから、学生たちにとって好都合なのかもしれない。
だが、コミュニケーションをできるだけ避けるようになるのは少し問題があるかもしれない。これは教員側にも言えることではある。
 

オンデマンド講義をOBSで作る

私自身ややリアルのコミュニケーションが苦手なので、学生もたぶんオンデマンドで自由に視聴できるほうが楽なのではないかと思って、オンデマンド講義にすることが多い。私の場合、実習や演習形式が多いので、もちろんオンデマンドだけではなくZOOM等の双方向授業は必須である。
今回は筑波大学用にOBS Studioでオンデマンド講義動画を作った。だいぶ慣れてきて、20分×8本くらいの分量をほぼ2日で作ることができた。以前80分1本で四苦八苦してた頃に比べると早くなった。
ZOOMでもオンデマンドぽく作れるが、画質・音質は悪いし、私は講義に動画をかなり使うので、ZOOMのクオリティでは厳しい。OBSはクロマキー合成もできるようなので、昔、JMOOC用に大変な苦労をして作ってもらった合成の講義動画もこれなら一人で割と簡単に作れそうである。
 

学生は勝手に検索して使いこなす

検索の時代にあって、「教える」とはどういうことか考えさせられることが多かった。興味さえあれば学生たちは自発的にPremiere ProやPhotoshopなどの使い方を調べていくので(After Effectsでさえも!)、彼女ら彼らに与えるのは知識よりも動機の方がはるかに重要である。
強いモチベーションをまず持ってもらうのが何より大事だとすると、この授業で何ができるようになるかを、最初のほうで明確にまた魅力的に示す必要がある。
またこのネット検索の時代に、得難いのは知識ではなく、体験であることがより明確になった。一人で悩むのではなく、よく知っている人間に教えてもらうことで思いもしなかった「化学反応」が起きる。仲間の学生と話し合うことで自らの内部から生まれる気づきもある。
 

学びを進める駆動力とは

というわけで、オンライン教育の駆動力となるのは、「動機」「自発性」「リアルでの体験」ということになるだろうか。こんなことは経験豊富な他の教員たちが過去にいくらでも言っているだろうが、改めて感じたのでここに記しておく。

がらにもなく、今日はまじめに書いてしまった。3つ終わってほっとしたのだろう…。
本当はもう一つあったはずなのだが、コロナで潰れてしまった。残念である。次は授業ではなく、自治体職員への研修となる予定である。

2020/10/2

NHKさわやか自然百景「北海道 帯広の森」を制作

ここでは、まるでサーバエンジニア初心者みたいなことばかり書いていましたが、本業は映像ディレクターでした…。
久しぶりにディレクターとしてNHKの自然番組「さわやか自然百景〜北海道 帯広の森〜」を制作しました。

北海道帯広市にある広大な都市公園 帯広の森

NHK さわやか自然百景「北海道 帯広の森」
https://www.nhk.jp/p/sawayaka/ts/89LVV5QNNM/

さわやか自然百景「北海道 帯広の森」放送日時
本放送:2020年9月13日(日)前 7:45~7:59 NHK総合
再放送:9月19日(土)前 6:30~6:44 BSプレミアム
BS4K放送:9月13日(日)前 7:45~7:59
             :9月13日(日)後 6:45 ~6:59
             :9月18日(金)後 8:45~8:59
 

エゾモモンガ(オス)
ハイタカの撮影

北海道に移り住んで10年以上。一度は北海道で自然番組を作りたいと思って、新型コロナが落ち着いた6月下旬から7月中旬までの間隙をついて何とか作ることができました。

今回のロケでは、6月20日、帯広の森の某所にて、畜大の研究者や学生さんの協力のおかげで奇跡的にエゾモモンガの繁殖行動が撮影できました。

いろいろつらいこともありましたが、自然番組のロケは(撮れれば)楽しいなと改めて感じました。協力してくださった皆さん、ありがとうございました。

2020/9/17

サーバを Amazon LightSail へ移行

結局、データ量やアクセスが極めて小規模なのに、EC2およびロードバランサー(ALB)を使うのはちょっとコストがかかりすぎる(月35USDくらい)ということで、Amazon LightSail でサーバを立てました。

一番小規模な月3.5USDのプラン(最初の1ヶ月無料)にしましたが、値段はつまり1/10くらいですね。個人HPくらいだったら、これで十分ではないかと思います。まあ、これまでのは勉強代と自分に言い聞かせています。

サイトの複製には、Duplicator というプラグインを使いました。簡単に複製できて便利です。ただMysqlのデータベースやパスワードは把握しておく必要があります。wp-config.phpがhtdocsディレクトリ内にあると移行できないので、FTPソフトで、名称を変更しておくか削除しておく必要があります。
またインストールで問題が起きないようターミナルソフトでのhtdocsディレクトリの一時的な権限変更もしておいたほうがよいかもしれません。LightSailの場合クリックひとつでターミナルがブラウザ上に出てくるので便利です。

Route53で元のドメインのレコードに新しいIPを紐付けられるのかがちょっと不安だったのですが、とりあえずは問題なく紐付けられたようです。

Route53コンソールでの変更

あと、もう一つ不安だったのが、SSLです。しかし、AWS Lighgsail には Bitnami HTTPS Configuration Tool (bncert tool)が入っているようで、こちらは思ったより簡単にできました。以下が参考になりました。

・AWS Lightsail でWordPress を簡単に常時SSL化

https://blog.tsukashu.net/lightsail-ssl-bncert-tool/

・bitnami redmineにSSL証明書(Let’s Encrypt)を導入する

https://qiita.com/kooohei/items/c4ac40f4bbf366cc0e31

2020/8/1

WordPressのマルチサイト化

前投稿でも書いたように、なんやかんやでAWSのEC2にはお金がかかります。最初からLightsailで作っておけばよかったかと若干の後悔もありますが、同一サーバにたくさんサイトを構築できれば、何とか元は取れるのかもしれません。
しかし、Wordpressのマルチサイト化はここを見ても分かるように結構めんどくさいようです。できなくはないですが、すでに作ったこのサイトに何かエラーが出ても嫌だし、このサイトをマルチサイト化するのはとりあえずやめようと思った次第です。

しかし、昨今のコロナ対応で教育用サイトを作らないといけなくなり、既存の大学で用意されているものは何か使いにくいし、Googleサイトはあんまり好きじゃない、MoodleをインストールしてID管理までするのも何かおおげさだし…。ということで、瞬間風速的ではありますが慣れてきてるWordpressで作っちゃおうと思いました。

WordPressサイト複製の方法

方法は結構、簡単でした。参考までに私の環境ではWordpressは上記のようなドキュメントルートに入っているので、そこにディレクトリを作って(上図ではぼかしています)、その中に新しいWordpressをダウンロードしてインストールするだけです(細かいことはこちらとかこちらを参考に)。あとはいろいろな指示にしたがって、wp-config.phpなどを作っていけばOKです。ファイル内容の変更に関してはFTPソフトから権限変更できれば簡単ですが、できない場合はターミナルソフトからコマンドラインで変更して下さい。

Mysqlのデータベースはできれば新しく作る

データベース名やユーザー名、ホスト名、パスワードは、ターミナルソフトで確認して、そのとおり打ち込めばいいのですが、テーブル接頭辞というのだけは新しく作らないとサイトが作れませんので注意が必要です。既存のWordpressサイトのデータベースを上書きして消してしまわないように(さらっと書いてますが、バックアップ取ってないと悲惨なことになります)。
というより、Mysqlより、新しいデータベースを作ってそこにtableを入れたほうがあとで管理も楽だと思います。

最近はサーバやWordpress周りをいじるのに凝っていますが、科学番組制作もそろそろ本格的に始まってきたので、意外と時間がなくなってきました。独立&客員教員になって数ヶ月は海外でのんびりしようという夢はコロナもあってさっそく頓挫中です…

2020/4/11