映像制作の組織内製化について

大学や研究機関の科学コミュニケーションにおいて、映像制作が活用される機会がますます増えてきた。私が大学に転職したのが2009年ごろだが、最近は隔世の感がある。
以前とある研究機関の方から、外部の映像プロダクションとの意思疎通がうまくいかず、組織として考えているような広報映像や学術映像を作ることができないと相談を受けた。

TV番組ぽくなってしまったり、ありがちな味気ない講習動画みたいになる、または研究内容のコアの部分を理解していないことを指摘しても、この方が一般の人には分かりやすいとか、映像制作の文脈ではこちらが正しいと押し切られてしまう感じらしかった。

札幌岳登山道より(記事内容とは関係ありません)

クライアントと制作側、どちらの方針が結果として正しいかは分からないが、少なくとも研究機関の意志を反映させるには、一定程度の内製化が重要ということになるだろう。とはいえ、全部、内製できるだけの能力や余裕があればそれでよいが、やはり外部の手を借りるほうが効率も質も上がる。

以前聞かれた時はうまく答えられなかったのだが、最近、様々な組織と一緒に制作するにあたって、比較的内製化しやすい部分とそうでない部分があるなと分かってきた。

1.内製化しやすい業務
・プロデューサー(内容・品質チェック)
・ディレクター(連絡・調整)
・静止画、動画素材の調達
・スチルカメラ(一眼レフ。インサートや広報写真用)
・ビデオカメラ(風景やインサートカットのみ)
・公開業務(告知用文章、サムネイル作成、アップロード等)

2.外部に依頼したほうが良い業務
・ディレクター(演出・構成)
・ビデオカメラ(インタビューや演出上必須の映像等)
・一眼レフによる動画撮影
・音声
・編集
・デザイン
・ナレーション制作
・MA・音響効果
・CG、解説図

3.協働する業務
・プロデューサー(コンセプトメイキング)
・テロップ内容
・ドローン撮影(これはケース・バイ・ケース)

この3つの役割分担は流動的に変化するので、自らの組織にとってどういう体制がよいかは相対的である。例えば、デザイナーが内部にいる場合もあるだろう。現時点では、このベストミックスが以前の相談への回答になるかもしれない。

また内製比率を高めたい場合は、2の業務に関して研修を行うことで、内部のスキルを高めていくことができる。ただ、一口にSD研修といっても、組織として目指すゴールや体制を設定できていないと、ぼんやりとした成果しか得られないかもしれない。

2022/8/28

人生の落とし穴

人生どこに落とし穴があるか分からない。長い人生を生きていく中で、いきなり何の予告もなく、深い闇に落ち込んでしまうことがまれにある。暗闇の中、一瞬、何が起きたか分からず、走馬灯のように過去を思い出す時間もなく、またたく間に着地する。

そしてスマホの画面が割れ、何か気持ち悪い緑色の藻と泥でジーパンがびっしょりになってしまっている。インターネットカフェのシャワールームで洗濯したものの匂いがとれない。

それにしても、ほんとうに用水路はぴったりと完璧に鉄製の網で蓋をしてほしい。NHKでも危険な用水路についてのニュースがあった。

行ったことのない街で真夜中に歩きスマホは絶対にやめよう。皆さんもリアルな落とし穴にくれぐれもご注意を。

2022/6/9

2022 新年の抱負

今年で錦鯉の長谷川と同じく50歳になる。こないだ同窓会的な忘年会を札幌でやったが肩が痛い、近くが見えないなど情けない話題と、子供が大学に入っただ、受験だなんだ中年トークでひとしきり盛り上がる。

ここで今後の仕事に夢も希望も無いとなると、なかなか寂しいものがあるが、まだ若い学生と一緒に何かを作るような仕事でよかった。私自身の発想が枯れても、若い子たちからいくらでも出てくる。自分の仕事はそれをうまく着地させ最終的な成果物にもっていくことかな。

富良野スキー場にて

簡単にまとめると以下のような抱負になるだろうか。

  1. 付加価値の高いコンテンツをつくる
  2. 若い人の新しい発想を大事にする
  3. 才能をオーガナイズする

1は、具体的にいうと、私のように小規模な個人商店では普通に映像を作ってもまず見てもらえないので、何かしら表現方法に新規性をもたせることだ。今は学生の発案で、小規模なプロジェクションマッピングに取り組んでいるが、それもAfter Effectsを使えば誰でもできるレベルのものである。しかし、VRやARなど組み合わせによっては、注目してもらえるようなコンテンツが作れるかもしれない。昨年投稿した論文では「体験型映像」と名付けている。

2は、価値観が転換している今の時代においては、自分の感覚は当てにせず、若者の発想力に頼るということだ。もちろん彼ら彼女らは最後までやり切る経験やノウハウに欠けている。そこを補いながら、着地まで持っていってあげることが年長者の仕事である。ましてや教員なのでそれがメインだ。だから、突飛な発想であっても、無理だとは言わず、どうすれば最後までもっていけるかを考える。

3は、これまで個人で形にすることが多かったが、今後は才能をうまく組み合わせて相乗効果を出すことが今の立場では重要だ。なので、安い仕事を請けて一人でやり切るみたいなのはもう止めたい。自分でできないことといえば例えば、デザインや音楽、アニメーションなどだが、こうしたジャンルの優秀な人をどんどん組み合わせて大きい成果につなげたい。

学生に表面的な技術を指導するのはそれほど難しくない。本当に難しいのは、コンテンツそのものを作る、つまりきちんと企画・構成して意味のある作品に仕上げるということだ。普通に良質な映像作品を作ってもそれほど注目を浴びることはないのだが、本来はそうした「内容そのもの」をきっちり作るのが一番難しい。そういう意味ではテレビとかで鍛えられた人は強いなと思う。科学番組を作るのにあまり科学のバックグラウンドは必要ない。大事なのは経験によって鍛え上げられた感覚である。

2020年にはフリーのような状態になっていろいろな選択肢が自分の前に示された時があったのだが、昨年のように、専任教員を軸にたまに本務に役立つような形での動画作品を作るのが自分にとっては最適だった。事務系の専門職みたいな話もあったのだが、こちらは本当に向いてないとつくづく思った。しっかりした事務がバックにいると心強いが、私自身は仕事で少しでも非効率なところがあるとすぐ嫌になってしまう性分なので書類仕事は難しい。

というわけで、今年も引き続き昨年の路線で教育3+制作1くらいの割合でがんばっていきたい。

追伸:過去の年賀状を失くしてしまったのと住所録が文字化けしてしまっていたので、年賀状は来た方にだけ追々出していきます。すいません。

2022.1/2

MacBook Pro 2021での動画編集

MacBook Pro 2021(14インチ, M1 Max)で初めて映像(2021年ノーベル化学賞「不斉有機触媒の開発」の再現実験)を作ったので、細かい話が多いが、気づいたことをM1Pro,Maxでのプロダクションに興味ある方向けに書いておきたい。

タッチパネルは相変わらずの操作性の良さで、特にキーボードは軽くて打ちやすい。画面も有機ELなみにきれいである。また動画の書き出し時間も圧倒的に早いので、躊躇なく書き出して確認できる。
ただ、そこまで気になるほどではないものの、自分としてはメモリと容量を増やせばよかったというちょっとした後悔もある。
 

編集の様子
メモリ64GB、容量2TBくらいがよかったかも

今のように複数の4K編集プロジェクトを並行していると、1TBの容量では足りなかった。2TBにすると4万プラスになってしまうのでためらってしまったが、やはりひとつのプロジェクトの素材が200GB、After Effectsのキャッシュはすぐ100GBくらいはいってしまう。これがFinal Cut Proであればもっとキャッシュがすごいかもしれない。いったん編集が終わってもこれから修正やフォローの仕事もあるので、すぐには内蔵SSDからは消せないし。

あとM1MaxなんだからPremiereやAfter Effects、Photoshop、Chromeブラウザ等をばんばん同時操作しても問題ないかなと思ってたが、やはり早く同時に動かすとスタックすることもある。Premiereで4Kを何枚も重ねるくらいではどうもないかもしれないが、複数ソフトの連動は負荷がきついようだ。CPU,GPUはM1Maxだが、メモリは今の倍の64GBのほうがよかったかもしれない。

雑誌記事やYouTuberとかは時間もないので、割と単純な作業でベンチマークを計測する傾向がある。買ってしまった後で今更だが、複数ソフトを連動させる方は参考にしてほしい。
 

After EffectsとPremiereの連動の不具合

なぜかAfter Effectsを立ち上げていないと、PremiereのAEクリップが正常に読み込まれないことがあった。これで結構時間をロスしたが、なぜ読み込まないのか悩まないで、AEを操作していない時であっても全部同時に立ち上げておくと問題ない。もっともこのバグ?はいつの間にか治っていたが。
※ファイル名とコンポジション名を日本語にしていたことが問題だったかもしれない。これで問題はだいたい解消した(2021.12/14追記)
 

14インチは移動での仕事に便利

今回は移動しながら、大学や車の中、カフェみたいなところなどいろんな場所で作業したので、やっぱり14インチは軽くて持ち運びやすい。今回のM1Pro、Maxは14と16でほぼ性能差はないので、デスク環境ではどのみち外部モニタがあるし、移動多めの人は14で間違いないと思う。

Liquid Retina XDRディスプレイが高輝度で美しいので見やすい。私はBetter Touch Toolのショートカットで輝度をタップですぐ調節できるようにしているが、ここぞというところで輝度を上げてすぐに確認できるようにするのがお勧め。
 

充電器はほぼ持ち歩かなくてよい

すごくバッテリーがもつので、充電器を持ち運ぶ必要がなくなり、身軽で良い。自分の場合は、職場と自宅、単身先の自宅にぜんぶ充電器を置いている。Amazonで見つけたHypprの100W 急速充電器 GaN がセールで2600円くらいだったのでかなりお得だった。

あと、80%くらいでバッテリーを最適化してくれて助かるが、手動でフル充電にしておかないとうっかり80%のまま持ち運ぶことになってしまうので、移動する前にフル充電を忘れずに。

SDカードスロットやHDMI端子などが復活して、USBハブみたいなのを持ち歩かなくてよくなってMacの携帯性が上がった。
 

AirPods Proのノイズキャンセリングが便利

Mac本体とは関係ないが、AirPods2を落としてしまったのでだいぶ前にProにした。ノイズキャンセリングが優秀なので、移動しながらの編集が非常にやりやすい。空港などでは重要なアナウンスも聞き逃してしまうおそれもあるが、集中して作業したいときに必須。
 

Mac以外のこと

今回は自分で撮影・音声、デザイン、編集とやったので、イメージ通りに作れたのは良かった。何でも一人の難点は、他から刺激や気付きがないので技術が進歩しないことだが、今期は前半がインプットの時間だったので、まあまあその成果は出せたかもしれない。

最近は、現場で少しディレクターもやるものの、それ以外の取材や連絡は若手に任せることも多い。映像制作そのもの以外の仕事もかなり多いので、少し役割分担するだけでぐっと楽になる。
プロの現場だと1人のディレクターに全て任せることがあるが、適切に分担したほうが早くて正確な仕事になると思う。たまにプロデューサー的な人が3人、メインD1人みたいに、P的役割が多い時があり、チェックに制作コストをかけすぎかなと思う。同じ4人で作るならP1人、メインD1人、サブD2人にしたほうがずっと仕事に余裕ができ、質も上がるだろう。

大学で作る場合はチェックは事務方が行うので、そもそもメインP的な人はいないし、グーグルドキュメントでテロップやコメントを共有しながら共同編集していくので作業も早い。DXでさらにスピードと生産性が求められる中で、各現場で今後はどんどん機動的な体制に変わっていくだろう。

2021/12/12

一人だとテキパキ 〜雪彦(せっぴこ)山〜

図書館に行って調べ物をしてるときに、紅葉もそろそろ終わりだなと思い立ち、先週土日は地元姫路に帰って雪彦山登山とたつの市の室津(むろつ)港で釣りをしてきた。牡蠣シーズンということもあってか、相変わらず御津(みつ)の道の駅は大人気で満車だった。実家からすぐなので、できたばかりのときに行ったのは懐かしい思い出だ。
ちなみにこの記事は初めて新しいMacBook Proを使って書いた。Photoshopも試してみたので、多めに写真が入っている。

久しぶりの御津町(みつちょう)に着いたらコスモスがきれいだった
道の駅 みつ
室津で釣り

室津での釣りは中2以来であるが、昔は港ではなくもっと崖を降りて岩礁でキスやベラなどを釣っていたような気がする。今回はグレの子供とカサゴが数匹。カサゴは飲んでしまうので、針外す時苦痛を与えてしまった。今度はピンセットを忘れずに持っていこう(車に忘れた)。その後は少し飲みにくい百均のジグヘッドを使ったのですぐ外れるようになった。しばらく観察しようとバケツに入れておいたが、まだ小さかったので逃した。

それほど来てはいないが、何かなつかしい室津港
調理するのも大変だし小さいのばかりで逃した

室津の町並みの中に入っていった記憶はあまりなく、狭い石畳をはさんで趣のある古い民家が並ぶ。司馬遼太郎もこの街に泊まり、「街道を行く」に記している。落ち着いて風情のある町並みでタイムスリップ感がすごい。

これは料亭だが この先は古い町並みが伸びている

龍野市はすぐとなり街だ。小学生の頃に醤油工場に見学にいったくらいで、童謡「赤とんぼ」で知られる三木露風ゆかりの名所や、歴史のある社寺、アトリエやカフェなど見どころも多いが、近すぎてあまり観光地として認識していなかった。夕方になるとたつの方面から流れてくる赤とんぼを聞いて遊びをやめて夕暮れのなか家に帰ると、温かい夕食の匂いと声に包まれるという心象風景がある。

雪彦山登山
紅葉がきれいだった

朝早く起きて夢前(ゆめさき)川上流にある雪彦山に向かう。道に迷ったり色々トラブルがあり少し遅れて9時頃、登山開始。歩き始めはヤブツバキやアラカシなどの常緑樹に、クリやモミジが交じるような少し薄暗い森だが、すぐに紅葉がきれいな明るい森になる。

登山口は車でいっぱい
思ったより岩山 クライマーのかけ声が響く

ただ、思っていたより岩山で、ロッククライミングの人たちも多く、「ビレイ解除!」といった掛け声が響く。よく分からずに上級者コースに入っていったら、びっくりするほど鎖場やハシゴが多くて、道もややこしく、遭難者が多いのもうなずける。実家の近くにこんな岩山があるとは知らなかった。

PhotoshopのAI機能で登山者を消してみる(笑)面白いので元画像も右上に残したが、人がいたとこに変な鎖が描かれてしまってる

下山口から降りたところに、洒落た店(時のレストラン「野」)があったが、汗びっしょりで入れそうな雰囲気ではなかったのでスルー。意外とキャンプ場やコテージなどいろいろある。夢前川上流には小魚もいた。
やけに敷地が広く眺めの良い雪彦温泉でゆっくり汗を流した。駐車場に行くまでのモミジの連続した植栽がとてもきれいだった。ちなみに江口のりこも夢前町出身である。

敷地が紅葉できれいな雪彦温泉

帰りは出身高校の近くを通って、ロードアイランドカフェというアメリカ・ロードアイランド州をイメージした内装のカフェで柔らかな酸味のスペシャルティコーヒーで一息。

ロードアイランドカフェ。アイスはおまけしてくれた

ふだん家族と暮らしていると結構だらだらしてしまうのだが、一人だと無駄口を叩く相手もいないため、すごく予定通りに忙しくてきぱき動いてしまうところがある。渋滞に巻き込まれないよう20時過ぎまで実家で掃除などして過ごし、SUBARUステラで帰った。

ちなみに今回も駐禁シールはられたり竿先折ってしまったりとトラブル続きだった。幸い、駐禁は免れたようだが。
新しい充電器がAppleから送られてきて、Macbook proのバッテリーのエラーが起きることもなくなり快適になった。最適化も正常に機能しているようで、充電が時々保留されたりしている。

2021/11/25

Macbook Pro とともに進化していきたい

Macbook Pro 14インチを開封してセットアップしてみた。まだ4日目くらいなので本格的に動画編集はしていないが、After Effectsで教材制作したり、iMacのPremiere Proでいま作っている動画をこっちに移行した。動作は俊敏で本当に気持ち良い。
M1 Max、10コアCPU、32コアGPUメモリとフルパワーにしたのだが、さすがに40万超えは厳しいなと思い、SSDとメモリは妥協して1TB、32GBで抑えた。

14インチは軽くて運びやすい

昨年11月にM1が出た時は我慢したのだが、その後、映像制作の仕事やオンライン授業での動画制作がかなり多かったこともあり、Mac Miniでいいから買っておけばと本当に後悔したものである。しかし、さすがに昨年買ってたら続けざまにM1 Maxを買うことはなかっただろうから、この喜びは体験できなかったと思えば、直近の過去はきれいに忘れ今は大いに満足している。

学生時代の友達がcolor classicを使っていたり、 筑波大学理科系修士棟のコンピュータルームがMacだったため、かれこれ30年近い付き合いだが、今回のMacbook Proは、(現時点で)歴史に残る究極のノートPCになったのではないか。以前のMacたちは見送って本当に良かったと思っている(笑)。
構成によっては軽く200万超えの、そして今思えば最後のIntel MacProが出たときは、まさかその2年後にこんなラスボスが控えているとは夢にも思わなかった人が多いだろう。昨年のSoCという新しいアーキテクチャによるM1 Macシリーズもかなりの衝撃だったとはいえ、すぐ次の年にさらに究極形へと進化した。

裏面にMacBook Proの刻印が入った箱型のスタイル。ちょっと懐かしい感じで良い

あんまり使ってなかったBetterTouchToolを本格的にカスタマイズしてますます気持ちよく感覚的にタッチパッドやMagic Mouseで操作できるようにしている。指で自在に操れるように成長していくのがとても良い感じである。

だが、自分は4K編集と、ちょっとAfter Effectsを使うくらいで、現時点ではこのマシンの潜在能力を活かしきれないかもしれない。なので、久しぶりにFinal Cut Pro とMotionにも回帰しようかと思う。またコンピュータの進化にあわせて、3DのCG制作やプロジェクション・マッピングなども自在に作れるよう自分も進化させていきたい。そう思わせてくれるのが、Macの良いところであり、職人にとって道具は命なのである。まあ、Windowsもよく使うし決して嫌いではないが。

特にTVを辞めて以降は、Appleの進化と伴走するようなキャリアでもあった。そこは意識的にそうしていた面もある。新聞記者を辞めて映像、そして教育にジョブチェンジしてきたわけだが、テクノロジーの進化と自分のキャリアの目指す方向が一致していたのは職業人生的には幸福だったといえる。

全然関係ないが、北大医学部前のユリノキがきれいだった

それにしても、気になるのは、MagSafe3が時々、オフになって充電されない時があることだ。サポートと電話したが、M1でできなくなったはずのSMCリセットを提案されたのでこりゃだめだと思った。他にも同様の症状が集まっていて何か有用な情報が得られるかと期待したのだが。MagSafeや様々な端子やファンクションキー(Touch Barは実はよく知らないのだけど)が戻ってきたのは本当にありがたいが、MagSafeは以前からこういうトラブルが多いので要注意である。

追記:その後、Appleから経過調査の連絡がきた。結構気にしているようだ。バッテリーの最適化のオンオフで試してほしいと言われた。ネットではMagSafe3は磁力が強すぎるという話も聞いたが、確かに少し強めではある。別にだからどうってのもないけど。いずれにせよ、新製品なので、Appleも注視しているといったところか。

2021/11/11

大峰奥駈道登山

昔、大学時代にワンゲルの同期が大峯奥駈道(おおみねおくがけみち)の縦走に行っていて、いつか関西に戻ったら行こうと思っていた。1300年ほど前の奈良時代から歴史のある吉野と熊野を結ぶこの修験道は、いまや世界遺産(『紀伊山地の霊場と参詣道』2004年登録)にもなっている。

上りが結構きついコースだった(行者還トンネル西口コース)

しかしどうも効率ばかり重視してしまいがちな性格の私は、近畿最高峰の八経ヶ岳(はっきょうがたけ)だけさくっと往復してきた。学生時代のように無駄に長い日程でときには10日ものんびり山中を縦走するとかもうできない。

学生の頃は特に深く考えることもなく、体力、時間、集中力をすべてワンゲル活動に全振りしてしまっていたが、貴重な経験だったなと今にして思う。今はちょっと前ほど忙しくはないものの、さすがに足元もふらついてて、学生時代のように飛ぶように下山するとかも無理。

大峰奥駈道 八経ヶ岳山頂より 立ち枯れているシラビソ林(たぶん)
山頂の看板と錫杖(左)

帰りは天川村で天の川温泉という今風のデザインの温泉でのんびり汗を流し、高速道路をぶっ飛ばして帰ったわけだが、レンタカーを返すまでに時間があったので、その短時間を有効に使うために、帰るやいなやなぜかすじ肉を煮込んで、カレーの準備をして、洗濯機を回してから、レンタカーに戻ると、わずか10〜15分程度ハザードをつけていただけでセルモーターが回らなくなってしまっていて、返却時間に間に合わないという失態を犯す。

天川村 天の川温泉

これはさすがにJAFの人とも整備不良ですよね、と話したものの、もうちょっと余裕をもって行動しないといけないなと反省した。その後、早まって航空券を間違って買ってしまうという失敗もおかしてしまったし、我ながらもはやいい年してるんだから落ち着けよといいたい。いくらお金をむだにしてるんだと。

2021/10/26

原生林をぶらぶら

用事があって姫路の実家に戻っていたので、車で1時間半ほどの岡山県西粟倉村に行ってみた。牧大介さんの「ローカルベンチャー」という本を読んで面白そうだなと思ったからだ。

岡山県西粟倉村
アマゴも泳いでいた 今度は釣りにいきたい

緊急事態宣言開けということもあって道の駅や温泉などは賑わっていたが、北部にある若杉原生林という森は人けもなくひっそりしていた。ハイカーが2人いたが入れ替わりで下山していった。

美しい人工林の奥に原生林がある(駐車場から人工林側を見てる)
美しいスギ林の奥にある若杉原生林

特に何の目的もなく峠まで歩いていたのだが、他に誰もいなくてすごく気持ちよかった。意外と一人で原生林をぶらぶらすることは少なかったかもしれない。だが、何か大きな動物が少し遠くでバサバサ茂みから出てきたのは怖かった(カモシカ?)。

きびだんごやぶどう、米を買い、ひとりで天気の良い原生林を歩いて温泉でのんびりする。なかなか素晴らしい休日だ。これから姫路の実家を掃除しに帰りがてら、近くにある良い感じの村をぶらぶらするのが趣味になりそうだ。時間もないので、釣りなのかハイキングなのか目的をはっきりしたほうがいいかもしれない。

岡山といえばぶどうだが、私が子供の頃よりずっと甘く、皮も薄い。最近は大きいのに種もなく食べやすくなった

2021/10/10

ハイブリッド配信のニーズが増える

ワクチン接種率が上がり少しずつ日常を取り戻してきたという状況を反映して、今後、リアル会場とオンライン配信をつなぐハイブリッド配信のニーズが増えてくると思われる。
昨年度、所属部署で購入機会を逸したBlackmagicdesignの「ATEM mini Pro」と、ZOOM(オーディオ機器メーカーのほう)の「PodTrak P4」を使って9/25にYouTubeでLIVE配信を行った。北海道大学ホームカミングデー文系4部局合同企画シンポジウム公開講座「コロナ禍を考える」の配信で、司会が2名、登壇者は4名、無観客という状況である。

ATEM mini ProもPodtrack P4も4系統の入力端子がある。ATEMには2カメ+講師PC、事務局PCの4つを入力した。音に関しては、大学の場合はすでに音響設備が教室ごとに整備されているケースが多いため、そのまま教室のマイクやスピーカーを使ってSUB OUTからP4にミックスされた音をもらうか、直接、ATEMに流すのが良いだろう。
ただATEMだとひと目でわかりやすい音量調節つまみがないのと、どうもMic入力しかないようなので、やはりここはいったんデジタルオーディオミキサーを入れたほうがノイズも少ないし操作もしやすい。今回はSUB OUTからRCAケーブル−ミニプラグ変換でPodtrack P4の3ch(スマホから入力可能な端子)に入れた。Podtrack P4の場合、SounPadというボタン一発で登録済み音源を出せる機能もあるので、BGMも流しやすい。

配信の様子

ATEM mini Proを操作するATEM Software Controlから直接配信など様々なことができるようだが、今回は慣れたOBSを使った。テロップや看板はPowerPointで職員の方に作ってもらってOBSから出すことにした。原始的ではあるが、最もかんたんな方法である。
文学部の事務局と実施したのだが、担当された職員の方は結構、マスターできたと思うので、今後、何度か経験を積めば2人体制くらいでできるようになるのではないか。今後は私自身も Software Controlとイーサネットケーブルで旗艦PCとつないだ直接配信を試してみたいと思う。

少し秋めいてきた北大キャンパス

今回、コロナ禍の状況に対して、北大教員が文系の視点で本音で語るというイベントで、内容も十分面白かったので、もっと広く見てもらえればと思った。
LIVE配信自体の垣根はだいぶ下がってきたが、どんなイベントでも同じで、集客やマーケティングは課題である。今回の場合、事前打ち合わせで先生方に自由にディスカッションしてもらって、なんか面白そうだなと思わせるような予告動画を作って、それをTwitterやFacebookなど各種SNSで流すのも有効かなと思った。話題作りがないと、北大の研究に何となく興味はあっても、いきなりポンと本番には入ってきにくいかもしれない。とはいえ、予告編だけ徹底討論風で、本番になると淡々と進んでしまう可能性もあって難しいが。
これは大阪で年明けに企画されている私の市民講座でも同様で、職員の方に広報をおまかせしてしまっているが、やはり集客に苦労されているようだ。いずれにせよ、これは面白そうだな、見てみたいと思わせるショートムービーみたいなものも今後は考えていきたい。

2021/9/26

海をきれいにするな?

岡山県倉敷市、瀬戸内海の海でノリの不作が続き、コンビニでもノリを使わないおにぎりが4割に増えてきているという。確かに最近、ノリって意外と高いなと思っていた。
瀬戸内海は高度成長期に赤潮によって瀕死の海といわれたが、行政や企業が排水の水質改善に取り組み、瀬戸内海では窒素の量は1/3まで減少したという。その結果、窒素やリンといった海中の栄養塩が減ったことがノリの色落ちを招いた。他にも魚や貝もプランクトンなどの餌が育たないため減少した。海がきれいになったのは喜ばしいが、漁業者にとっては複雑で、古くから漁をしてきた男性は「海が泣きよる」と話していた。

NHK地域局発@okayama▽きれいな海から豊かな海へ転換期迎えた瀬戸内海 
20210年5月18日午前10:15-10:40 ©NHK

北大を卒業しNHK岡山局でディレクターをしているSHさんが制作チームの一員だったということで連絡をいただいたのだが、私が筑波大学の自然保護寄附講座でやっている科学コミュニケーションの授業にも関連していたので興味深く拝見した。まだぎりぎりNHK+で見られるのでぜひ上の画像のリンクから見てほしい。
 

排水をあえてきれいにしない

いまは岡山県の児島湾につながる下水処理施設で、排出される窒素の量を基準の範囲内で増やしているそうだ。これまで家庭などからの排水はバクテリアの働きで窒素を取り除いていたが、その働きを弱め、90年代の水準まで窒素の量を増やし、ノリの色落ちを防ぐことができるか調べる。もちろん、窒素だけが色落ちの原因ではない可能性もある。また季節ごとの管理によって赤潮になる心配はない

しかし同じ行政でも環境管理課や観光に携わる人からは、きれいな海が汚れてしまうのではないかと心配する声が上がる。シーカヤックのガイドの方はツアー客が最も感動するのは透明な瀬戸内海であり、観光への影響を懸念する。私もこの方がガイドをしている牛窓に家族みんなで旅行に行ったことがあり、今でも良い思い出になっている。
 

どんな自然を理想とするかは人によって違う

これは自然環境保全を巡る価値判断の問題であり、どんな自然環境が望ましいのかが人によって違うため共通の理想像を作りにくいことを示している。かつて2005年に私が六甲山でさわやか自然百景をディレクターとして制作したとき、可愛らしいという視点だけでイノシシやうり坊を紹介するのはいかがなものかと感じ、そこからずっと気になっていたことでもあった。

科学技術社会論で「専門家だけで決められない価値判断を含む科学技術の問題」のことを「トランス・サイエンス問題」という(詳しく知りたい方は大阪大学の小林傳司先生のこの論文などを参照)。原子力や生殖医療などがその典型だが、時代が変化することで環境保全や自然保護もトランス・サイエンス問題の一つになったといえる。
どのような状態が最も最適な自然環境なのか、過去のいつ頃の自然を目指すべきなのかは専門家だけで決定できず、地域住民や関係業界団体、行政、NPOといった利害関係者で合意をまとめる必要がある。

例えば、生物多様性と水質環境のというのはどちらも高い・きれいというのが望ましいわけだが、「水清ければ魚棲まず」と言われるように、この要素は相反することがある。もちろん高度成長期のように徹底的に汚染されている場合は水質の改善がそのまま生物多様性の向上につながるわけで、私が学生の頃は自然保護にそれほど複雑なニュアンスはなかった。つまり破壊されてしまった、あるいは破壊が進行中の自然をとにかく守り復元していく方向性が明確だったわけだが、1990年代頃から自然環境が少しずつ改善され、例えば瀬戸内海では水質を上げることで水中の窒素やリンが不足し、生物にとっては住みにくい環境になってしまった。

原生林が素晴らしいことは自明であるかのように言われることがあるが、実際の原生林は湿度が高く、虫も多く、必ずしも誰もにとって快適とは言えない。中央アフリカの熱帯林にしばらく滞在してニシローランドゴリラやチンパンジーを撮影したことがあるが、ツェツェバエやハリナシバチ、アフリカミツバチなどに付きまとわれ、必ずしもいつでも気持ちよいわけではない。
もちろんこういう環境が大好きな研究者や保全活動家の方々もいるが、一般的な感覚とは言い難い。つまり、絶対的に減っている原生林を増やそうという合意はとれても、それが自らの生活空間に及ぶと、そうも言い切れなくなってくる。
  

異なる立場の人々が対話する

このように立場によって意見が異なる問題の合意を作るのは難しい。番組はこうした科学コミュニケーションの問題まで切り込んでいた。広島大学の松田治先生によれば、これから目指すべき理想状態というのは実際は社会条件、その時々の自然環境によって変化するため、いつ頃の自然に戻すべきかという発想ではなく、関係する人々で地域の実情に応じてどんな海が良いのかを考えることが大事だという。

こうした里山、里海づくりには、自然科学の専門家だけでなく、NPOやコミュニケーションや合意形成のプロも入って様々な立場の人の異なる意見や取り組みを集約し、地域ごとに合意を作っていくことが大事である。こうした問題にまず取り組むのは地域の自治体だと思うが、早い段階でこうしたNPOやプロを入れて意見を集約していくのが望ましいと思う。今回のNHK岡山局の番組はこうした地域の取り組みの事例として参考になる。

2021/5/22